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冒険者と羊たち(1)

 

「 旅人たちは私達の土地を見て、自分もずっとここに住みたいというんだよ。 」

「 でも僕は彼らの住む土地を見たいんです。彼らがどうやって生活しているかも見たいんです。 」

( 中略 )

「 これはある時野原で見つけたものだ。これをお前に残す遺産の一部にしようと思っていた。

しかしこれで羊を飼いなさい。そして野原に生きなさい。

いつかお前にも、私たちの田舎が一番良い場所で、ここの女性が一番美しいと分かるだろう。 」

父親は少年を祝福した。

少年は父親の目の中に、自分も世界を旅したいという望みがあるのを見た。

それは何十年もの間

飲み水と食べる食糧と、毎晩眠るための一軒の家

を確保するために深くしまい込まれていたものの、まだ今も捨てきれない望みだった。

 

これは私が大好きで、今までに何度繰り返し読んだか分からないこの本の一節で

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主人公のサンチアゴという少年が、子供には神父になって欲しいと思っている父親に心の内を打ち明ける場面です。

このシーン、特に

父親の目の奥に現れる「本当はあるのに見ない振りをして抑え込んできた “ 自分も世界を旅したい ” という本望 」

がここ数週間何度も脳裏に繰り返し出て来まして。

 

このサンチアゴ少年は父の言ったように羊飼いになります。

それ以降羊の描写が何度も繰り返し出て来るのですが、こういった感じです:

羊たちの興味はと言えば、食べ物と水だけだった。

彼らの毎日はいつも同じ日の出から日没までの、限りなく続くように思える時間だけだった。

彼らは若い時に本を読んだこともなく、少年が都会の様子を話しても何のことか分からなかった。

彼らは食べ物と水さえあれば満足していた。

その代わり、彼らは羊毛と友情、そしてたった1度だけだが自分の肉を気前よく与えてくれた。

もし僕が今日凄く残忍な男になって、一頭ずつ殺すことにしたとしても、殆どの仲間が殺されてしまってから、彼らはやっと気が付くのだろう。

羊たちは毎日新しい道を歩いているということに、気が付いていないことだった。

彼らは新しい場所にいることも、季節の移り変わりさえも知らなかった。

彼らが考えることは、食べ物と水のことだけだった。

羊たちが実際にすることと言ったら、食べ物と水を探すことだけなのだ。

 

私は最近になってようやく、人間にはザックリ大きく分けて

1、自分の夢や進むべき道がハッキリ分かっていて、チャレンジしていく人
2、自分の夢や進むべき道を何となくは分かっているけれどそちらには進まず、世間の言う『 これがよしとされる常識的な道 』を進むことにする人
3、自分の夢は特にない、なので世間の言う『 これがよしとされる常識的な道 』を進むことにする人

の3種類があるのだと分かってきました。

 

いや、実は大昔に一瞬気付いたことがあるのです。

私は音楽の道を究めるためにドイツに行くのだと決意し、ビザが下りるだけのお金も準備して、飛行機も予約して、受験願書も送付して・・

というように何もかも全て準備万端にしてから親にドイツ行きを告げたのだけれども

その時、私は “ 自分が何をするために生まれて来たのか、そのために進むべき道 ” を確実に知っていた。

やはりその時の確信は正しかったと今言えるのだけれど、当時父は反対したのです。

ただ、その自分の内側にある確信があまりにも大きく揺るぎないものだったので

私は

人間誰しも

“ 自分が何をするために生まれて来たのか、そのために進むべき道 ”

ある年齢になれば確実に掴むもの、知るものだ

と思っていたのです。

だからそれを真摯に訴えれば父も ああ、あれか と理解するだろうと。

でも彼はそれが1㎜も分からない様子だった。

全くサッパリ話が通じなかった。

その時ふと

この人は私の倍以上の年数生きていながら、もしかすると私が持っているような確信を経験したことがないのかも知れない

とチラっと思ったのを覚えています。

ただ、その確信があまりにも揺るぎないものだったので、そのふと過ぎった考えを即座に打ち消したのですが。

 

今なら分かる。

 

1、自分の夢や進むべき道がハッキリ分かっていて、チャレンジしていく人
2、自分の夢や進むべき道を何となくは分かっているけれどそちらには進まず、世間の言う『 これがよしとされる常識的な道 』を進むことにする人
3、自分の夢は特にない、なので世間の言う『 これがよしとされる常識的な道 』を進むことにする人

 

 1番に該当する人は実は殆どいない。

人類の大多数は2番と3番。

私の父も2番か3番に属する人だった。

 

そしてここがものすごく重要なのですが

1が良くて、2はまあまあで、3はあんまり

などという話では 全くない のです。

 

続きます。

冒険者と羊たち(2)冒険者は一夜にして成らず
この記事の続き: 私がこの本に出会ったのは、渡独を決意した前後です。 下の弟が この本ええで。読んでみる? と何となく勧めてくれたのがきっかけ。 当時自分の状況や思考の方向とあまりにも被る部分が多く、大変な衝撃を受けて 何度も自分を勇気づけ...

 


 

実はこの記事を書き始めて、たったこれだけ書くのに1週間くらいかかっています。

全く一人になれる時間が取れないという原因もあるのですが

このシリーズ記事の着地点、自分でも分からないのですよね。

でも書きたいことが山ほどあり、書かなきゃいけない気がするので書ける時に続けます。

 

Sunlight, Tangier, 1914 Henry Tanner

アルケミストの舞台の一つが、この Tangier(タンジェ)というモロッコの街

 

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