F. シューベルトのErlkoenig/魔王に見る親子関係、どちらがどちらを守り食い物にするのか。現代でもよくある話。

だからその意識が向く先は、本当はどこなんだよ?という、音楽+前回に引き続き父と息子の話

最近この動画がお勧め欄に上がって来ましてね。『Erlkoenig/魔王』というドイツ歌曲です。

以前このコンサートで、私はこのバイオリニストのこの曲を、2mほどの至近距離で聴いているので、動画を懐かしく拝見しました。

この曲はもともと

ドイツの文豪ゲーテの書いた詩に、ドイツの作曲家シューベルトが曲をつけたドイツの歌曲です。

『こんな夜中に森を駆け抜けるのは誰だ?それは父と子。』から始まって、魔王が子どもを連れていこうとする。子は父に助けを求めるのに、父は子の訴えを聞かない。
魔王は子を捕まえ、気付いたら子は死んでいたという話。

いいですよ、めっちゃいいから聴いて!14秒あたりからスタート推奨。

しかしだ。
こういうのを聴くと、当然歌詞を読むわけですよね。さすがに全部聞き取ることはできないので。

その中で子供は

お父さん、魔王が来るよ!見えないの?僕に話しかける声が聞こえないの?

必死にお父さんに恐怖と迫りくる危険を訴えるのですが、父親はのらりくらりと

てんでまともに取り合わない

一方、魔王の方は典型的な誘拐犯の手口で

いい子だね~おいでよ、一緒に楽しく遊ぼう!
僕の娘も歌って踊って、母さんもいるんだよ、さあさあ!

と子供を連れていこうとするのです。
もうね、これ詩の始まりから

(んんん???)

という感じが満載でね。

子供が必死に訴えるのに、お父さんはまともに取り合わない。むしろ話を逸らす感じ。
それだけでも妙ですが、本来ならそこまで怯える子に対して『大丈夫だよ』とたとえ口から出まかせでも言うはずです。恐怖を取り除くべく。言いますよね、子供が怖がっているのだから。

それが一言も『大丈夫』と言わない。
それどころか

と言うのです。

???

更に子供を狙う魔王の方はと言えば、子供に向かって

お前のその隅々まで丁寧に美しく作られた姿を見ると興奮する。
もしおまえが嫌だというのなら力づくで!

というのですが

『力づくで』・・・何だよ?

って話ですよ。

更に子供は続けます

お父さん、魔王が僕を捕まえた!
魔王が僕に害をなしてくるよ(痛いことをしてくる、みたいな意味)!

そして気付いたら子供は父の腕の中で死んでいた。

って、森、親子、魔王といういかにも物語風な登場人物やアイテムを取り揃えながら、その実何を表しているかというと

としか思えないのです。
魔王が『興奮する!』という単語も、性的に興奮するという時によく使われる単語ですし、父親の『静かにしていなさい』もおかしい。

と思って調べてみると、やはりそういう解釈はアリアリの有りらしく。

で、昨日の記事と関連する話になるのが、親の意識は本当はどこに向いているかの話。

あわせて読みたい
映画『リトルダンサー』より:あなたの意識が本当に向く先は 最近つとに思うのは、『どこに意識を向けているか、それが何よりも重要だ』ということ。あなたの意識は本当はどこに向いているか。どこを見ているのか。 ちゃんと子供の心を真っ直ぐまともに、真剣に見つめているか。

お父さんは子どもを守っているようで、表向きに守っている演技をしているだけなのではないか。
肝心の子供に意識が向いていない。上の空。周りばっかり見てる。
その結果子供は死ぬ。

もう一つの解釈としては更に何歩も進んで、父親が子どもを売ったパターン。
日本でも昔、貧しい時代・地域では、口減らしで娘を売ったりして食いつないでいる話はよくありました。
あれは世界共通で、状況によってはいくらでもあり得る話。

食うに困る状況の中、小さな息子が見目麗しく、有力な領主に舌なめずり状態で狙われていたとしたら。

のらりくらりと子供の声を聞いて聞かぬフリ、何が起こっているのか知っているけれど見て見ぬフリ。大きな声を出すな、面倒なことにするな、お前さえ黙ってれば助かるのだからと。弱いものを口封じ。
子を生贄に大人が生き延びる話なんて、ドイツにだっていくらでもあったでしょう。現代にだって形を変えて存続しています。

その結果子供は死ぬ。
それも『どこか遠くで』ではなく『父親の腕の中で』死んでいた、なのです。
分かってたはずなのに、目の前で見殺しにしたよね?がそこで現れてるのだよなあ・・ゲーテはそれを言いたかったんじゃないかな。

で、そんなこんなを実に見事に演じ分けて歌うのが、私の好きなバリトン歌手 Hermann Prey/ヘルマン・プライ氏。

いや~色々な人を聴き比べて、皆さん本当に素晴らしい。素晴らしいのだけど、ヘルマン・プライさんのそれは!流!石!に!王者の風格。マジで只者ではない。下心漏れ漏れで『でへへへ』とピンク色撒き散らしながら寄ってくる魔王の部分が、ホントいやらしさが出ていて最高。
好きすぎて、もう自分でも歌えるほど(笑)何度も聴いちゃったわ。

で、実はゲーテはシューベルトの曲は嫌いで、せっかく曲をつけて送られてきても、その楽譜を送り返すというスーパー塩対応。シューベルトの一方的な片思いだった・・などと言う話をし始めると終わらないので、本日はここまで。

でもシューベルトのドイツ歌曲、ホントどれも素晴らしいので

めげずに作ってくれてありがとうー!

なのであります。

本日もお読みいただきありがとうございました。

M. von Schwind, Erlkönig(魔王)

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