行って参りました、韓国の若きピアニスト Yunchan Lim氏のラフマニノフ2番を聴きに。
今回はオーケストラも良かったです。綺麗に艶やかに纏まっていてよかったなぁ・・(ホッとする私)
ラフマニノフはやはりいい。
ロシアの芸術ってロシアの暗い灰色と吹きすさぶ寒風、荒涼とした大地の色が隠しきれず滲み出るのがものすごく好き。
ラフマニノフも良かったのだけれど、アンコールがバッハのソロだったのですよね。
これがしみじみと良かった。
彼の演奏の魅力は初めてYouTubeで出会った時にも思いましたが、心の底に確かにある静寂。あの静寂はすごい。
彼はどういうお育ちなのだろう?と思う。
人並みに壁を越えてこられたはずだけれど、日常的にその人格や存在を滅多切りにしてズタボロに否定されるような環境ではなかったのではないかな。
なんだその変な感想?
と思われそうですが、もしそうであれば自分の中に真の静寂を得るのは至難の業。常に『自分はこれではいけない』という強い自己否定感と、『いや、でも自分はこうなのだからこうありたいのだ』というありのままの姿とが内側で死闘を繰り広げる。
そんなところに静寂はなかなか生まれない。
内側に静寂がなければ演奏にあんな濃い確固たる、でもとてもやさしい静寂はそこに存在できない。
しかしだからといって全肯定ばかりの甘い環境で成長していれば、それはそれで彼固有の静寂も生まれてこなかったであろうはず。
どういう人たちに囲まれて、どんな日々を過ごして、あのとても美しい、深くこちらに染み入る静寂は彼自身からそこに存在することを許されるに至ったのか。
この度のケルンのコンサートホールは全部で2000席。昨日もほぼ満員であり、その約2000人が息をのんで注視する中、自らの発する音の世界に完全に入り込み、深々(しんしん)とした静寂を紡ぎ出す。
そこに迷いも邪念もない。
あの年であの静寂。
あの年で。
この方2004年生まれなのですよね。
2004年って・・・この間じゃないですか!?
つい最近赤ちゃんだったの貴方!?
で、今これ??
ってなりますよ。
この世にはわけの分からない人がぽつぽつ誕生しますね。(褒めてる、めちゃくちゃ褒めてる)
ちなみに小柄で細い方でした。
東アジアの学校であれば1クラスに必ずいそうな雰囲気の青年。
演奏の後花束を貰っていたのですが、受け取った後
Y:あっ・・あの、これ・・・どうぞ
指揮者:えっ・・・僕に?
Y: ・・・・・・。
指揮者: ・・・・・・。
指揮者:ははは・・・じゃあこちらの女性に差し上げましょうか。
Y:ですね。どうぞ。
みたいな一瞬停止の不思議な一幕があり、笑いが起こっていました。
最終的にお花を貰ったバイオリンの人
『あの~お花要ります?』
拍手が鳴りやまず、舞台中央でお辞儀して舞台裏に引っ込んで・・を繰り返して、3回目には舞台の真ん中まで来ずにちょっと顔出しで舞台の脇の方でお辞儀だけして消えて行ったのですが、あんなの初めて見たわ(笑)
ここでも笑いが起こっていましたよ。
いや~良かった。
今度は絶対に全プログラムソロの構成で聴きたいものです。
4月6日にウィーンのKonzerthausでゴールドベルク変奏曲(バッハ)を演奏というのがあるのですよね。
うーん、何とか行けないものだろうか・・・?
聴きたいなあ。
本日もお読みいただきありがとうございました。
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